2010年5月3日月曜日

カボタージュ部分緩和

 先日カボタージュを定義とともに政権交代に関わらせ、規制緩和の懸念を記事にして(2010年2月27日)投稿しました が、その懸念がついに現実のものになってしまった。

 今年の3月下旬、国土交通省は「沖縄―本土」間の一部の船舶輸送を外航船に行わせることを認めた。これは昨年沖縄県知事が該当区間のカボタージュ緩和を申請していたものに応える形で、主として①物流コストの低下、②それによる県経済振興増加を目的として緩和されたというものである。
 緩和については、①沖縄県那覇市とうるま市をそれぞれ自由貿易地域、特別自由貿易地域とし、該当区間で沖縄県側の発着点をこの2つに限定させ、②運航する外航船は日本船社が運航するものと、2国間の相互主義を基にした国の船舶に限定させ、さらに③輸送量は年間2000トンを限度とするなど、制限を設けている。

 しかしながら、現在のところこれら地域での内航海運業界に対する影響は少ないという。輸送量2000トンは一月あたりおよそ9TEU(20フィートコンテナ9個分)であるし、このようにわずかな取扱量では大量の荷物を取り扱う外航船は参入しないだろうという業界としての予想が出ている。
 これならば安心なのだが、今回のカボタージュ緩和は内航海運業界の再三再四の反対や陳情をしたにもかかわらず、国土交通省あるいは沖縄県は緩和を進めてしまったという。この緩和を普天間基地問題を進める上での餌ではないかという考えもある。それならば短絡的である。先日の記事でわたしが政権交代と絡めて懸念したがままになってしまう。
 そのうえ、このような調子で沖縄県全域をカボタージュ緩和してしまった場合は外航船の新規参入はあるだろうし、およそ倍の運賃で運航せざるを得ない内航業者は倒産に追い込まれる。日本人船員が失業し減少する。国内の海上安全が危ぶまれる。さらに短絡的な考えで安易に規制緩和が全国にも及びかねない。民主党政権は内航海運業界の現状を熟知する必要があるだろう。

参考文献・サイト
アドメディアvol.172「沖縄航路のカボタージュを認める」
http://www.admedia-tokyo.jp/backnumber/contents/172.html
内航ジャーナル社「月刊内航海運 2010年4月号」2010年

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