2010年2月27日土曜日

カボタージュ と政権交代

カボタージュ。
辞書では、船舶の国内沿岸航行とか、航空機の自国機限定運行とある。つまるところ海事では、自国内の海上輸送は自国籍の船舶・船員で行うということであり、これを法律で定めている。


飛行機だとわかりやすい。日本・外資系航空会社を問わず、国際線の飛行機は日本の空港に複数回寄航することはないし、あったとしても日本国内のみの搭乗はできない。

このようにしている意義は、①低相場・運賃の外国船の参入を防止することで内航海運業界を守ること、②有事の際に安定した自国輸送ができる船員を確保できること、以上2つにある。したがって、日本の内航船員は全員日本人であり、外国船が国内輸送をすることは無い。これらのことから、カボタージュは全世界で適用されている。また安全基準を満たしておらず日本に不慣れな外国船が国内輸送をする場合は、海難事故の危険が高まる。現に日本で海難事故を起こす船舶の大半が外国船である。

しかしながら、これは相場の関係から日本では非常にコストがかかり、したがって荷主企業からは運賃に対する不満が多く、国内輸送にも外国人船員を導入するべきだという見方まである。

外航海運船社ではほとんどの乗組員が外国人となっており、これによって人員コストを抑えている。コストを抑えるにとどまらず、これら外国人船員の養成にも力を注いでおり、量だけではなく質でも乗組員を確保しているということになっている。

最近日本では政権交代があった。マニフェストに無い外国人地方参政権を発動しようとしている。これに対する賛否さておき、外国人の被選挙権が与えられる以前に、外国人労働者を国内に浸透させる動きがあるだろう。外国人労働者は現状でもいわゆる3K(きつい、きたない、危険)を伴う業務に勤しんでいるが、まさに3Kの船員という職業に外国人労働者を送り込むことはないようにしてほしい。この流れだとカボタージュを規制緩和しそうな現政権。経団連の要望を受け入れないのでコスト面で規制緩和を受け入れることは無かろうがそれでも心配だ。

有事はいつ起こるかわからない。それに備えて海外の外航船社の中でも、EU国籍の者にしか船員として採用しない船社(マースク)や、船舶職員は全員台湾人という船社(エバグリーン)も存在する。日本の外航船社でも近頃は日本人船員を増やす動きが見られる。

 閉鎖的な考えになってしまったが、カボタージュにはそれなりの意味があり、海難事故防止のためにも、日本人船員確保のためにも、カボタージュを緩和してはならない。

参考文献
成山堂『交通ブックス・現代の内航海運』鈴木・古賀著、2007年
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北極海航路

「北極海新航路の波紋」 (日経、09.9.27)


(要約)9月に、ドイツの海運会社ベルーガが、2隻の貨物船で北極海を航行しアジアから欧州に到達することに成功した。北極の氷が解け海面が広がったことにより実現した。北極点を通過することで、アジア―欧州間では従来のスエズ運河経由の航行よりも行程は3分の2となり、10日間の短縮となる。またその分二酸化炭素排出量も削減できる。特にロシア政府がこの航路に期待を寄せている。シベリアへの物資輸送が迅速になるためだ。国際レベルでも新航路に期待しており、NATOなどが設備等の設置を協議しているが、船舶が北極海を航行すれば北極海を汚染すると主張する環境団体もある。



確かに、北極経由の航路を創設することで、時間短縮やコストカット、あるいは温暖化防止に貢献するかもしれない。現状ではスエズ運河に通じるソマリア沖は海賊被害が絶えず、他にもマラッカ海峡など、危険で注意を要する海域が多数存在するので、これを回避できるならば海難事故が減少することにもなるかもしれない。

だが環境団体の主張も見逃せない。大型の商船の排気はすさまじく、船舶の交錯する海域では船の排気による環境被害もある。一概には言えないが、北極海航路の構想は、政府や船社や荷主のコストカットに走った上の短絡的な意見とも言える。ガラパゴス諸島にディーゼルのトラックを大量に走らせるようなものだ。排出量や環境への影響を慎重に調査するべきである。

実現すれば地球全体の温暖化が抑えられる航路になれる一方、温暖化で害を被る象徴的な場所を通過し、また北極の汚染をもたらす航路というのが皮肉だ。
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2010年2月26日金曜日

伊豆大島へ新航路

「江の島―伊豆大島航路復活」(朝日2.23 第2神奈川面)

(要約)東海汽船によれば、藤沢市の江ノ島から伊豆大島への航路を自主運行で復活するという。昨年に3回にわたる藤沢市の援助によるチャーター運行によって、採算が取れることが判明したためだ。かつて定期航路があった同航路であるが、35年ぶりの復活となる。なお6月9日よりジェットフォイルによる運行を予定している。

 何かと不採算だ、廃止だと騒がれる旅客船業界では珍しく朗報ですね。といっても、東海汽船は高速道路との競合は無く、伊豆諸島―東京間の航路を独占しており、これらは補助金付けなので潤っているのですが。
 
 それにしても江ノ島からというのが意外。新聞には運航の周期は書かれていなかったが、藤沢市などによる江ノ島の観光PRや、藤沢駅から連絡バスを手配するなど、藤沢市周辺の利用客獲得にも力を入れるべきだろう。

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2010年2月2日火曜日

これはまずいですな…船員求人が【内容追加】

中身はわからぬが、内航新聞の一面にはこんなトピックが…

http://www.naikou.co.jp/topics/2010-01-25.htm

船員求人が5割減と…

近頃は海員学校生ほぼ全員が就職できるというすばらしい職種だった船員。
この不況の中、どんな資格があろうと就職難には変わりないから当然船員求人も減るだろうと思ったものの…

これは減りすぎだろ!

…しかし、後々この減り具合にうなづいたことも事実。


 事実、外航船社のみならず、内航大手や近海を網羅する船社の求人は海員学校ではなく、海事系大学や水産大学校、商船高専に行くという現状がある。確かに、これら教育機関は3級が取得できる上に、最先端の研究にも触れることが出来、れっきとした学位が取得できる。入学試験にも真剣な勉強が必要で、位置づけも“国立理系”という最高位のステータスを有するものだ。
 海員学校はあまりお勉強が出来ずとも入れる。わたしのような数字に弱い文系が面接と作文と算数でも入れるし、高校生から入る人には水産高校の延長線という感覚で励む人も居るだろう。正直な話、わたしの地元の水産高校は“馬鹿が入る”というイメージを誰もが持っている。これから入る同期や先輩方を批判するつもりは無いとは断っておく。
 このような視点から見ると、もし船員にヒエラルキー(階級)が存在するとしたならば、海員学校出身の船員は、上記3つの学校出身より劣るし、最底辺といっても過言ではない。ゆえに景気悪化に伴う海員学校求人激減はしかるべきだと言わざるを得ない。


 自らがこれからこのようなところに進む前に、非常に残酷な現状を知ったと思う。学校生活では積極的な姿勢で何事にも熱意を持って取り組むことが、この茨の道を突破する術であろう。


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