「北極海新航路の波紋」 (日経、09.9.27)
(要約)9月に、ドイツの海運会社ベルーガが、2隻の貨物船で北極海を航行しアジアから欧州に到達することに成功した。北極の氷が解け海面が広がったことにより実現した。北極点を通過することで、アジア―欧州間では従来のスエズ運河経由の航行よりも行程は3分の2となり、10日間の短縮となる。またその分二酸化炭素排出量も削減できる。特にロシア政府がこの航路に期待を寄せている。シベリアへの物資輸送が迅速になるためだ。国際レベルでも新航路に期待しており、NATOなどが設備等の設置を協議しているが、船舶が北極海を航行すれば北極海を汚染すると主張する環境団体もある。
確かに、北極経由の航路を創設することで、時間短縮やコストカット、あるいは温暖化防止に貢献するかもしれない。現状ではスエズ運河に通じるソマリア沖は海賊被害が絶えず、他にもマラッカ海峡など、危険で注意を要する海域が多数存在するので、これを回避できるならば海難事故が減少することにもなるかもしれない。
だが環境団体の主張も見逃せない。大型の商船の排気はすさまじく、船舶の交錯する海域では船の排気による環境被害もある。一概には言えないが、北極海航路の構想は、政府や船社や荷主のコストカットに走った上の短絡的な意見とも言える。ガラパゴス諸島にディーゼルのトラックを大量に走らせるようなものだ。排出量や環境への影響を慎重に調査するべきである。
実現すれば地球全体の温暖化が抑えられる航路になれる一方、温暖化で害を被る象徴的な場所を通過し、また北極の汚染をもたらす航路というのが皮肉だ。
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